お召し列車

御召列車 知られざる皇室専用列車の魅力


日章旗と菊の紋章をつけたお召し列車が最後に運行されたのは、天皇、皇后両陛下がスペイン国王を茨城県つくば市に案内した08年11月。07年にJR東が造った新型お召し列車「E655系」のデビュー、しかもお召し列車の運行自体約6年半ぶりで、沿線では多くの鉄道ファンがカメラを構えた。


 新型列車は「御料車」とも呼ばれる皇室専用の特別車両1両と、ハイグレード車の5両からなる。この5両は「なごみ」との愛称で一般向けの高級列車としても使われる。


 だが、特別車両は08年のつくば訪問の1度きりしか使われていない。今年4月の須崎御用邸への移動の際には久々に伊東駅までこの5両が使われたが、静養が目的だからと特別車両は連結されず、菊の紋章もつけられなかった。


 そうした中、約2年ぶりに特別車両を連結したお召し列車が9月下旬に使われる予定になった。両陛下が国民体育大会出席のために千葉県を訪れるためで、公務で房総半島を移動する際に乗車する。宮内庁によると、移動距離が長いため、自動車ではなくお召し列車を利用するという


お召し列車の運行には「三原則」があるといわれている。

  1. 他の列車と並んで走ってはならない
  2. 追い抜かれてはならない
  3. 立体交差では上の線路をほかの列車が走ってはならない

このため臨時に他の列車の時間調整を行なうほか、事故などの不測の事態に備えてダイヤ作成担当者がお召し列車に添乗する。
戦前にはお召し列車の10分程前に先導列車が運行され、先導列車が通過後はポイント操作が許されないなど特別の配慮がとられた。21世紀初頭の現在でも同様の措置をとる場合がある(後述の記載も参照、とりわけ鉄道ファンなどから「露払い列車」と呼ばれることが多い)。
お召し列車担当の運転士は、運転区間を管轄する車両基地内で技術・勤務態度・人間性を考慮して選ばれる。とくに衝撃のない発車や停止、数秒の狂いもない運転、数センチのズレも許容されない停止位置など、通常の列車に比べて非常に緻密な運行が要求されるため、運転技術がとくに優秀な運転士が選任されている。
移動日や時刻は官報によって公示されている。ただし通常の列車の場合もあるので、必ずしもお召し列車による運行とは限らない。あくまで皇族の行事参加および移動を掲載しているためである。