ウェットワーク (文春文庫)

ウェットワーク (文春文庫)
こないだの『バイオハザードIII』つながりじゃないけれど、こちらも、ロメロの『ゾンビ』/"Dawn of the Dead"から薫陶を受けたとおぼしき、ノンストップ系ゾンビ小説。著者は、80年代にファンゴリアで、ホラー作家のインタビューやスプラッタパンク論を書いていたライターらしい。


以下、かな〜り ネタバレ につき未読の方は注意。


大まかなストーリーは、ほぼ『ゾンビ』と同じで(笑)、そうなると、キャラクターの書き込みとかの小説的"上手さ"が勝負所になる筈なんだが、そこはそれ(?)、処女長編の熱狂で書き上げてしまっちゃったのね…ってのが、正直な感想。決して小説は上手くないし、「これはっ!」という驚きもない。
ただひとつ新機軸と思えるのは、読者が真っ先に感情移入するであろう主人公のひとりを、まだまだ先の長い物語の中盤で、いきなりゾンビにしちゃったトコ(^_^;)
「え…マジっすか…」と、ちょっと吃驚してしまいました(苦笑)
でも、そっからが、息が続かないんですよ残念ながら。これがスティーヴン・キングとかなら、ゾンビになってしまった「えもいわれぬ悲しさ」をゴリゴリと書きまくるんだろうけどねー。
あと、これにからんだ流れである、ゾンビによる国家転覆(!)なんてのも、アイディアとしては面白いけれども、やっぱりなんか上手くない。ゾンビなんつーウソ生物が、そんな大層なこと出来る筈ねえんだから、そんな砂上の楼閣をチマチマと描くより、これをオチにして、宙ぶらりんのまま放り出した方が、B級ホラー小説(褒め言葉)としては正しいんじゃありませんこと?


まあ、決して上手くはないんだけど、アタマ空っぽにして読めるエンタテイメントではあります。入院とかしてるときにぴったり(笑)


最後に、これだけは云っておく。
翻訳は糞。

ふたりはゆっくりと門に近づいていった。立ち止まると、ハリスはポケットからマールボロの箱を出し、コルヴィーノに勧めた。彼は断り、ハリスがタバコに火をつけている間に通りの様子を見た。
訳者は三川基好(みかわ・きよし)という人。ここだけ抜き出してみるとそうでもないように読めますが、実はコルヴィーノって方が主人公で、この直前まで、コイツ視点で書かれていたので、気持ち悪いったらありゃしない。