ウッフィー(WIIFY)

マジック・キングダムで落ちぶれて (ハヤカワ文庫SF)


ブログのコメントにも、「基本方針了解!」「丁寧な説明ありがとうございました」など好意的な内容が並ぶ。ソーシャルメディアを積極的に活用しながら、着々とウッフィー※を溜めている。


※ウッフィー:ソーシャルネットワークで結ばれた人同士に長い時間かけて育まれる信頼、尊敬、評価の総称


先日某所でプレゼンテーションの研修を受けたときに学んだ言葉にWIIFYという言葉あります。


WIIFYは、What's in it for you?の略で、日本語で言うと「相手にとって何の役に立つのか?」になります。つまり、WIIFYは聞き手に対するメリットのことで、プレゼンテーションはこのWIIFYに焦点をあてた構成にしなければならないというわけです。


例えば、企業を説明する際に、投資家に対しては、投資した何倍ものお金を還元できることを訴え、採用試験に来た人には、いかに会社の将来が明るくて、キャリアアップにつながるかを訴えます。これが逆になってしまっては、聞き手のメリットはゼロに等しいわけです。

なんだなんだウッフィーって?*1 また新手のバズワードか? とググってみたんだが、津田大介解説のTwitter本を経由してコリイ・ドクトロウの『マジック・キングダムで落ちぶれて』に行き着くとは夢にも思わなんだ。


本書の全体を通して流れるテーマは基本的にたった一つだ。それは「デジタル技術とソーシャル・メディアが発達したことで、我々の社会に従来型の市場経済(マーケット・キャピタル)とは異なる指標を持つギフト経済(ソーシャル・キャピタル)が誕生し、両者が猛烈な速度で収斂(しゅうれん)しようとしている中、個人や企業は後者といかに向き合い、活かしていくべきか」ということである。


その際に著者のタラ・ハントが核となる概念として用いているのが「ウッフィー」だ。


『マジック・キングダムで落ちぶれて』という小説のなかにある仮想の通貨。それは、他人に対して善行をおこなうことで蓄積されていく。そしてその世界では、すべての決済は「ウッフィー」でおこなわれる。

このウッフィーの説明を読んで、まず思い浮かんだのはペイ・フォワードとかインディアンのポトラッチとか、あるいはそれこそオープンソースの文化とかなんだけど、結局は、そのおこなわれた善行というのがネット上に記録され、しかも物凄い勢いで共有されるというところがキモなんだろう。そしてそのことで、善行をおこなった人も周りの人々も「最適化」される。
そういう意味では、これまたSFでアレだが1978年のネビュラ賞ヒューゴー賞ローカス賞を総ナメにしたSF史に残る傑作、ジョン・ヴァーリィの『残像』を思わせなくもない。

*1:ここでは『マジック・キングダムで落ちぶれて』や『ツイッターノミクス』の日本語訳同様「ウッフィー」と表記する。引用の中には「ウィッフィー」と誤記?されているものもある。