『ひとりっ子』/"SINGLETON and Other Stories"

ひとりっ子 (ハヤカワ文庫SF)
昨日、一昨日と、文学とか、恥ずかしいことを口走ってしまっちゃったので(笑)、チャキチャキっとソリッドでスタイリッシュなハードSFを。


グレッグ・イーガンについては、Wikipediaでも、はてなのキーワードでも勝手に読んでもらうとして(酷いことになっていないよう祈る)、現代SFのカッティング・エッジたるこの人のSF度は、相変わらず濃密濃密。ただ、それだけでなく、収録作が発表順に並べられた、この3冊目の日本オリジナル短篇集を読んで感じるのは、小説が上手くなってる(!)こと。
短篇って誰でもそうなりがちだし、またこの人の場合は特に、アイディア一発!ってイメージが、ずっと強かったんだけれども、こうやって順に見せられると、キャラクターや舞台設定への気の配り方が増して、アイディアの見せ方がエレガントになっているのが、良くわかります。
特に最後の二篇は圧巻。
久しぶりにSFを読んで感動しました。SF者は必読ね。


これに比べると、我が愛すべき『ルミナス』/"LUMINOUS"は、驚天動地のアイディア一発(笑)、変態SFの極北なのだが、やっぱりふくよかさに欠けるなあ(泣)
僕は大好きで、僕の中では相変わらず短篇SFオールタイムベストワンだけどね〜。


さっきの、小説が上手くなってる件だけれど、実は、この人のアイディアが、意識の実存や量子論や現代数学という、ある特定の分野に限定されることも関係があるかも。悪く云えば、アイディアに幅がない。そうすっと、見せ方に知恵を絞る必要はあって、それが前後逆の小説修行となって、イーガンの小説を、上達させしめたのかもしれない。
でまた、それは鏡の向こう側にいる読者にも云えて、もしかしたら、僕らは、そろそろイーガンに飽き始めているのかも。だから、イーガンの一番の魅力であるアイディア単体でなくて、アイディアの見せ方とかに目が行くようになってしまったのかもしれない。


今日はなんだかさっきから、"かもかも"ばっかしで、申し訳ないゴメンナサイ。