多指症

完訳フロイス日本史〈4〉秀吉の天下統一と高山右近の追放―豊臣秀吉編(1) (中公文庫)


多指(趾)症(たししょう)とは、手足の先天性の形状異常のひとつであり、指(足の場合は趾)が分離形成される段階で、1本の指(趾)が2本以上に分かれて形成される疾患のことである。結果として手足の指の数が6本以上となる。反対に、指の数が少ないのを欠指(趾)症という。手足の先天性異常では比較的多くの割合を占め、様々な症候群に合併する。


過剰な指(趾)が痕跡的に突き出るもの、細い茎でぶらぶらする指(趾)がつながっているもの(浮遊型)、完全な指(趾)の形を示すものまで見られさまざまである。
人種的には黒人に多く見られるが、どの人種にも見られ、日本人では手指の場合は拇指(親指)に、足趾の場合は第?趾に多く見られる。


多指症

 正常より指数が多い状態をいい、手足先天異常のうちでもっとも多い。
 手では母指側に圧倒的に多い。出生1000人に対して0.5〜1人の患者がおり、右手に多い。また、足においては小指側でよく見られ、「多合趾症」の形であることが多い。


秀吉は指が一本多い多指症だったとルイス・フロイスの記録や前田利家の回想録「国祖遺言」に記されている。後者によれば右手の親指が一本多く、信長からは「六ツめ」と呼ばれていたという。当時は(現在もそうだが)、多くの場合、幼児期までに切除して五指とするが、秀吉は周囲から奇異な目で見られても六指で生涯を通し、天下人になるまでその事実を隠すことがなかったという。しかし、天下人となった後は、記録からこの事実を抹消し、肖像画も右手の親指を隠す姿で描かせたりした。そのため、「秀吉六指説」は長く邪説扱いされていた。現在では、前田利家の証言記録などから六指説を真説とする考えが有力であるものの、一次資料が存在しないこともあり、いまだにこのことに触れない秀吉の伝記は多い。近年発表された小説でさえこの説を奇説扱いするなど、まだ一般に認知されるには至っていない。なお。戦国時代を題材にした漫画では、センゴクシグルイがこの説を取り入れており、これらの作品に登場する秀吉は六指である。